
戸建ての賃貸をやめたいと思ったとき、決めることは「貸すのをやめて売るのか」「このまま続けるのか」です。このページは、大家さんの立場で、入居者がいるまま売る方法と、買取に出すときの確認点を整理しました。
入居者がいても、貸主は建物を売ることができます。入居者の立場は民法と借地借家法で守られているため、売る前に、契約書や登記の状況を手元で確認しておくと迷いにくくなります。
賃貸をやめたい大家さんのポイント
- 貸し続ける・退去後に売る・入居者付きで売るの三つを比べる
- 入居者の立場は、売っても守られる部分が大きい
- 契約書・名義・敷金を先に手元で確認する
- 入居者付きの相談先とよくある質問
公式の案内 入居者のいる状態の不動産も積極的に買い取ると案内されています
戸建て賃貸をやめたいとき、選べる出口は三つ
やめたい理由が、手間でも、空室でも、修繕費でも、相続で持て余したのでも、出口はおおむね次の三つに分かれます。
| 貸し続ける(見直す) | 家賃や管理のやり方を変えて続けます。管理会社に任せる形もあります。 |
| 退去後に売る | 契約が終わるのを待ってから売ります。更新や解約の条件は、契約書と法律で決まります。 |
| 入居者がいるまま売る | 賃貸借を引き継ぐ買主(買取会社を含む)に売ります。入居者が転居する必要はありません。 |
家賃が入る間は、急がずに考えやすい面もあります。一方で、退去を待つ形は空室の期間が出ることもあります。どれが合うかは、次の更新の時期や、売却を急ぐかどうかで変わります。
入居者がいるまま売ると、入居者の立場はどうなる?
気になるのは「入居者に出ていってもらう必要があるのか」でしょう。買主が賃貸借を引き継ぐ形なら、その必要はありません。民法第605条の3は、貸主の地位を、賃借人の承諾を要しないで、売主と買主の合意で買主に移せるとしています。
大家さんの側で押さえたい点は二つあります。
- 登記:賃貸人の地位の移転は、所有権の移転登記をしないと賃借人に対抗できないとされています(民法第605条の2第3項。第605条の3が準用)。
- 敷金:賃貸人の地位が移ると、敷金の返還の債務は、買主が引き継ぐとされています(同条第4項)。実際の精算の方法は売買の条件で決まるため、査定のときに確認します。
法律の条文は、横浜・川崎の記事の法律の整理で、まとめて読めます。
「退去してもらってから売る」は、思うほど簡単ではない
売るために退去をお願いしようと考える方もいます。ただ、貸主から更新を断ったり解約を申し入れたりするには、正当の事由が必要です(借地借家法第28条)。条文には、貸主が立退料のような財産上の給付を申し出た場合も考慮すると書かれていますが、金額の決め方は書かれておらず、この記事でも金額は扱いません。



契約が、期間が終われば終わる定期借家なのか、更新のある普通借家なのかで、考え方は変わります。まず賃貸借契約書で種類を確認してください。迷うときは、弁護士などの相談しながら進めるとよいでしょう。
やめると決める前に、手元で確認したいこと
- 賃貸借契約書:普通借家か定期借家か、期間、更新の時期
- 家賃と敷金の金額、滞納の有無
- 登記簿:名義が自分になっているか。相続したまま名義が変わっていないときは、売る前に整理が要ります
- 抵当権など、ローンの担保が付いていないか
- 管理会社やサブリース会社との契約があれば、その解約の条件
売って利益が出たときの税金は、条件によって変わるため、ここでは断定しません。計算の考え方は、国税庁のNo.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)で確認できます。税額は人によって違うため、税理士か税務署に聞くのが確実です。
入居者付きで買取を相談できる先:訳あり物件買取プロ
入居者がいるまま売る方法の一つが、買取会社への相談です。「訳あり物件買取プロ」(運営は株式会社AlbaLink)について、公式サイトで読み取れた点と、読み取れなかった点を分けます。
| 読み取れた点 | トップページとFAQで、入居者のいる状態の不動産も積極的に買い取ると案内。買取査定や相談に費用はかからないと案内している。 |
| 注意書き | 物件の状況・権利関係・所在エリア等によって、費用負担を伴う買取条件の提示になる場合があると案内している。 |
| 読み取れなかった点 | 買取不可の条件。掲載の事例は3件(愛知・千葉・静岡)で、入居者付きの売却かどうかは事例の記載からは読み取れなかった。 |
査定のときに聞いておきたいのは、次の四つです。
- 賃貸借を引き継ぐ前提の金額かどうか
- 敷金の扱いと、精算の方法
- 費用負担を伴う条件になる場合、その理由と内訳
- 売却を決める期限(公式は、時間が経つと同じ査定額を出せないことがあると案内しています)
公式は、査定を受けても必ずしも売却する必要はないとも案内しています。金額と条件を見てから、売るか続けるかを決められます。
契約書を手元に、査定を頼むとき
- 賃貸借契約書と、家賃・敷金の金額
- 登記簿で、名義と抵当権を確認
- 売るかどうかは、金額と条件を見てから決める
公式の案内 買取査定や相談に費用はかからないと案内されています
出典:訳あり物件買取プロ公式サイト(トップページ・FAQ・注釈。令和8年10月23日に確認)
出典(法令・公的ページ):民法(e-Gov法令検索)、借地借家法(e-Gov法令検索)、国税庁 タックスアンサー No.3202(令和8年10月23日に確認)
戸建て賃貸をやめたい大家さんの4つの質問
- 入居者がいるまま売ると、入居者は出ていかないといけませんか?
買主が賃貸借を引き継ぐ形であれば、出ていく必要はありません。建物の引渡しを受けた賃貸借は、その後に建物の所有権を得た人にも効力があるとされています(借地借家法第31条)。契約書の期間や条件は、原則として、そのまま続きます。
- 売る前に、入居者へ連絡する必要はありますか?
入居者の承諾は要りません。ただ、貸主が変わると、家賃の振込先などが入居者に関わってきます。連絡の時期と方法は、売買の条件として、買主と決めておくと安心です。
- 預かっている敷金は、売るとどうなりますか?
賃貸人の地位が買主に移ると、敷金の返還の債務は買主が引き継ぐとされています(民法第605条の2第4項)。売買代金との精算の方法は取引ごとに決まるため、査定のときに、どう扱うか確認してください。
- 売った利益には、税金がかかりますか?
利益が出たかどうか、所有期間などで変わるため、一概には言えません。国税庁のページで考え方を確認し、実際の税額は、税理士か税務署に相談してください。
まとめ
戸建て賃貸をやめたいときは、貸し続ける、退去後に売る、入居者がいるまま売るの三つを比べます。入居者がいても、貸主の地位は買主に移せるため、退去が前提になるとは限りません。
まず、賃貸借契約書、名義、敷金を手元で確認しましょう。そのうえで、入居者付きの条件がどうなるかは、査定で聞くのが確実です。
戸建て賃貸をやめる前に
- 三つの出口を比べてから決める
- 契約書・名義・敷金を先に確認する
- 入居者付きの条件は、査定で聞いて確かめる
公式の案内 物件の状況によっては、費用負担を伴う条件を提示する場合があると案内されています
